予防接種

子宮頸がんワクチン

ヒトパピローマウィルス（Human papiliomavirus: HPV）が持続感染することで、異形成を生じた後、浸潤がんに至ることが明らかになっています。性交経験のある人の多くはHPVに一生に１度は感染するといわれています。日本においては、ほぼ100% の子宮頸がんで高リスク型HPVが検出され、その中でもHPV16/18型が50-70%, HPV31/33/45/52/58型を含めると80-90%を占めます。

子宮頸がん自体は、早期発見できれば予後が悪いがんではありませんが、妊孕性を失う手術や放射線治療を要する20-30代の方が、年間1000人程度いると言われています。子宮頸がんワクチン先進国のオーストラリアでは2028年には子宮頸がんはかなり稀ながんになるのではないかと言われています。

子宮頸がんが世界中からなくなれば、病気によって選択肢を狭められることなく生きられる女性が増え、性と生殖に関する健康と権利（SRHR: sexual and reproductive health and Rights）が促進されます。日本においては、子宮頸がんワクチンの普及が課題です。

日本では、2009年に２価ワクチンであるサーバリックス®が、2011年には四価ワクチンであるガーダシル®が発売となりました。そして2021年に９価ワクチンであるシルガード®が発売になりました。

サーバリックス®：HPV 16/18
ガーダシル®：HPV 16/18/6/11
シルガード®：HPV 16/18/31/33/45/52/58

それぞれの効果は上に示した通りで、サーバリックス®・ガーダシル®は60-70%、シルガードは90%の子宮頸がんの予防効果があるとされています。

すでにHPVに感染している人たちでは、子宮頸がんワクチンのHPV16/18に関連した前がん病変の発生予防効果は90 – 100%から30 – 60%程度まで低下すると言われています。よって、HPVに暴露される初交前での接種が最も重要です。その点で最も接種を推奨されるのは10 – 14歳の女性と言われています。

それ以降の女性でももちろん初交前であれば有効性は極めて高いですし、仮にHPVにすでに暴露し感染している方でも、ワクチンが有害となることはないので接種が可能です。

＜注意事項＞

当院では子宮頸がんの予防効果を鑑み、シルガード®のみ常時取り扱っております。ガーダシル®をご希望の患者様はワクチンを取り寄せる必要がありますので、お電話もしくは診療の際に、スタッフにお申し出ください。
交互接種について：2価もしくは4価ワクチンで規定の回数の一部を完了し、9価ワクチンで残りの回数の摂取を行う交互接種についても、実施して問題ないと言われています。
未成年の方で13歳以上の患者さんは、保護者の同伴がなくとも接種が可能ですが、あらかじめ予診票の保護者署名欄と同意書（https://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000017/17492/hpv_doui.pdf）の持参がないと接種ができませんので、ご注意ください。

川崎市の定期接種対象者

12歳となる日の属する年度の初日から、16歳となる日の属する年度の末日までの間にある女子（小学校6年生相当から高校1年生相当の女子）

＜接種スケジュール＞

1回目接種時点で15歳未満の場合
接種回数は2回です。推奨される接種間隔は６ヶ月間です。
（公費の接種に最低限必要な感覚は、５ヶ月間あける必要があります。）
1回目接種時点で15歳以上の場合
接種回数は3回です。推奨される接種間隔は1回目から数えて、2回目が２ヶ月目、3回目が６ヶ月目です。（公費接種に最低限必要な間隔は、1回目と2回目の間に１ヶ月間、2回目と3回目の間に３ヶ月間あける必要があります。）

麻疹風疹ワクチン

風疹は妊娠中に感染することで、赤ちゃんに影響が出る感染症になります。先天性風疹症候群と呼ばれ、症状は先天性心疾患、難聴、白内障などを示し、妊娠初期の感染では発生率が高くなります。妊娠する前に、赤ちゃんを守るため、ご自身が風疹抗体を持っているのか調べること、持っていない場合には予防接種を受けることが推奨されます。

当院は川崎市風しん対策事業の協力医療機関です。ご自身が無料検査の対象になるかどうか、接種の対象となるかどうかは、川崎市ホームページに詳しく記載がありますので、ご確認をお願いします。

また妊娠の可能性がある時期には接種ができません。さらに接種後２ヶ月は避妊が必要ですので、ご注意ください。
風疹、麻疹それぞれ単独のワクチンがありますが、混合ワクチンでも健康への影響はないといわれていますので、当院では麻疹風疹混合ワクチンを採用しています。