下腹部痛

下腹部痛

産婦人科で下腹部痛の原因として頻度が高いものは子宮内膜炎、骨盤腹膜炎などの感染症、排卵に伴う痛み、月経に伴う痛み、あとは子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症、卵巣のう腫などの疾患による痛みがあげられます。

感染症

外陰部・腟から子宮・卵管・卵巣へ感染が及ぶことを上行性感染と言い、雑菌やクラミジア・淋菌などの感染が下腹部痛や発熱の原因になります。感染が長引くと卵管機能に影響を及ぼす事があるため、下腹部痛がある場合は、おりものの検査をお勧めしています。原因菌に応じて必要な抗菌剤を使用します。

排卵痛・排卵出血

毎月1回、卵巣内の卵胞が2cm程度に発育し、排卵します。2cm程度の卵胞でもつっぱったような痛みや排卵前後ではズキズキするような痛みの原因となり、周期的な腹痛の場合には排卵痛の可能性を疑います。

痛みの感じ方には個人差があり、痛みで生活に支障が出る様な場合には低用量ピルで排卵を抑えることで、症状をなくすことができます。また排卵に伴って、卵巣表面の血管が破け、腹腔内出血を起こすことがあります。大抵は自然に止血しますが、症例によっては外科的手術が必要になるケースがあります。今まで感じたことのないような強い痛みが特徴です。

月経に伴う痛み

月経関連のトラブルをご覧ください。

子宮筋腫

子宮筋層を構成する平滑筋に発生する良性腫瘍でエストロゲン(女性ホルモン)が関与するエストロゲン依存性疾患です。

生殖年齢の女性の30%程度に見られるとされ、非常に頻度の多い疾患です。無症状のことが多いですが、漿膜下筋腫や筋層内筋腫(外へのでっぱりが強い)で他臓器を圧迫する場合、腰痛や腹痛、頻尿の原因になる可能性があります。

また粘膜下筋腫(中へのでっぱりが強い)で子宮内膜に突出する場合、過多月経の原因になります。大きい、多発、超音波検査での評価が難しい場合などはMRI検査を考慮します。状態によってホルモン剤でコントロールする場合やコントロール不良な場合外科的治療を考慮します。

子宮筋腫

子宮内膜症・腺筋症

子宮内膜様の組織が子宮内以外に異所性に生じた疾患です。原因に関しては諸説ありますが、妊活サポートで卵巣の状態をこまめに観察していると排卵後に血腫(卵巣に血が溜まった状態)になりやすい方が一定数いらっしゃいます。

その後を観察すると、徐々に小さくなり消えていく方もいらっしゃいますが、血腫が残る方もいらっしゃって、排卵が内膜症の誘因になっているのではないかと個人的には考えています。

月経痛や骨盤痛、性交痛の原因となり、最初は超音波検査では病変を確認できない腹膜病変(腹膜の表面に水疱や血豆のようなブルーベリースポットと呼ばれる病変ができる)を認め、重症例では卵巣にチョコレートのような古い血液が溜まったチョコレート嚢胞ができます。

さらに重症になると、骨盤内臓器がガチガチに癒着した状態になります。そうなる前に低用量ピルやジエノゲスト、ミレーナなどのホルモン剤で月経をコントロールすることが大切です。

腺筋症とは子宮内膜組織が子宮筋層内に浸潤したもので月経や出産を重ねるほどに増悪します。貧血の原因になることもあり、内膜症同様、ホルモン剤による月経コントロールが重要です。

卵巣のう腫

卵巣は骨盤内に存在する臓器で様々なタイプの良性腫瘍ができることがあります。無症状のことも多いですが、つっぱるような鈍い痛みや、腫瘍の破裂や捻転(捻れる)で急な強い腹痛の原因になることがあります。

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